こども誰でも通園制度 活用ガイドvol.1~東京都「多様な他者との関わりの機会の創出事業」ってなに?

こんにちは!「こども誰でも通園制度ナビ」スタッフで保育士のマコです。このサイトは、子育て支援を行うここるくが運営しています。
今回は「こども誰でも通園制度」(※以下、「誰でも通園」)に関する情報発信の一環として、東京都が独自に実施している「多様な他者との関わりの機会の創出事業」(※以下:「多様な他者」)についてご紹介します(全3回)。
「誰でも通園」も「多様な他者」も保育所、幼稚園、認定こども園等を利用していない未就園児が利用できますが、都内の区市町村によって内容や仕組みにバラつきがあるため、ちょっと分かりにくいと思っている方が多いのではないでしょうか?このシリーズでは、東京都内の方向けに「多様な他者」について整理してお伝えしていきます!
目次
1.はじめに|様々な制度が生まれたきっかけ
子育てをしていると、「入園はまだ先でいいけど、お友だちや他の大人と関わる時間も必要かも」と思うことはありませんか?
国や東京都が新たに始めた2つの制度は、まさにそういった考えをもつママパパの声に応えて生まれました。これまでも一時的・緊急的な場合に利用できる「一時預かり事業」がありますが、この2つの制度では、預かりニーズとは関係なく、こどもが育つためのよりよい環境づくりのために実施されます。つまり、保育者やお友だちと関わりながら、安心できる大人との信頼関係を築き、遊びや体験を通して「やってみたい!」「たのしい!」というこどもの気持ちが育っていくこと。 そんな育ちの循環を、日常の中でそっと支えるのがこれらの制度のねらいです。

2.「多様な他者との関わりの機会の創出事業」とは?
「多様な他者」は東京都独自の事業で都内62の自治体のうち昨年2024年度の実績で42自治体(※記事執筆時点で2025年度分は未発表)で実施されており、目的としては下記の内容が示されています。
保護者の就労等の有無にかかわらず、保育所、幼稚園、認定こども園等(以下「保育所 等」という。)を利用していない未就園児を保育所等で定期的に預かり、多様な他者との 関わりの中での様々な体験や経験を通じて、非認知能力の向上等、子供の健やかな成長を図ることを目的とする。併せて、支援が必要な家庭を新たなサービスにつなぎ、継続的 に支援することにより、在宅子育て家庭の孤立防止や育児不安軽減等、子育て支援の充実を図ることを目的とする。
つまり、未就園のこどもたちが、安心できる大人との信頼関係を築いたり、お友だちとの関わりを経験したりすることで、健やかな心の発達や非認知能力(自信、意欲、共感など)を育むことができるようにという目的が掲げられています。
ママパパにとっては、地域の園とつながる最初の一歩であり、子育ての孤立を防ぎ、安心して子育てができるよう支援する役割を担っている事業だということになります。
「多様な他者との関わりの機会の創出事業」概要

3.「こども誰でも通園制度」とは?
一方で「こども誰でも通園制度」は国が行う制度であり、現在115自治体で試行的事業として実施されており(※2025年7月4日付け)、2026年度からは全国で本格実施が予定されているもので、制度の意義としては下記の内容が示されています。
全てのこどもの育ちを応援し、全ての子育て家庭に対する支援を強化することは極めて重要 であり、社会の様々な人が関わり、社会全体で子育てを支えることが求められる。 こども誰でも通園制度は、こどもの成長の観点から、「全てのこどもの育ちを応援し、こどもの良質な成育環境を整備する」ことを目的としている。
「誰でも通園」については、【「こども誰でも通園制度」ってどんな制度?】のページでもくわしく解説していますので合わせてご覧ください。
「こども誰でも通園制度」概要

4.「こども誰でも通園制度」と「多様な他者との関わりの創出事業」を比較
「誰でも通園」と「多様な他者」を比較してみましょう。
「誰でも通園」と「多様な他者」比較

<共通点>
- 保護者の就労状況に関わらず利用できる
- こどもが園で生活することでお友だちや保育者と関わる機会が得られる
- 保護者は、育児の相談ができたり、親自身もリフレッシュしやすくなる
<相違点>
- 枠組みの違い:「誰でも通園」=国の制度で全国で利用可能になる、「多様な他者」=東京都独自の制度
- 利用頻度:「誰でも通園」=こども1人当たり月10時間まで(※2025年度中)、「多様な他者」=区市町村や実施施設によって異なり一日8時間までや週2日までなど様々
<混同しやすい理由>
- 実施施設や区市町村からの案内に名称が記載されず、「園体験」「通園プログラム」など独自表現で紹介されることがある
- 「誰でも通園」と「多様な他者」を同時に実施している区市町村、実施施設がある
- どちらも段階的な実施で、情報をキャッチアップすることが難しい
どちらもこどもの成育のための「こどもまんなか」な制度であるがゆえに、国と東京都とで別々の枠組みで実施されているところが、利用するママパパから見ると分かりにくくなってしまう要因と考えられます。
しかし、こういった制度が身近になってきている背景には「子育てを社会全体で支えよう」という日本の社会の大きな変化があると思います。この変化を味方につけるためにも、この2つの制度をきちんと理解して、賢く利用したいですね。
5.「我が家に合った園とのつながり方」を見つけよう

ここまで、「多様な他者」と「誰でも通園」について概要を整理しながら解説してきました。利用するにあたって大切にしてほしいのは、
「我が家は、今どのように園と関わりたいか?」
という視点です。
- 毎週通うのはまだ不安だけど、一度体験してみたい
- 少しずつこどもが集団の雰囲気に慣れていけるようにしたい
- おうちでの育児に、ちょっとだけ支えがほしい
そんな思いを持つご家庭にとって、制度は“手段”のひとつ。制度を知ることは、「選択肢を持つ」ことです。選択肢があるというだけで、子育ての不安は少し軽くなるかもしれません。
不安や疑問があれば、お住まいの区市町村の子育て担当窓口や、近所の子育て支援センターに相談してみましょう。ママパパもこどもも、“無理なく”“安心できる”一歩を見つけられるよう、制度はその土台を支える存在であってほしいと、ここるくは願っています。
「多様な他者」シリーズは、第2回 【「多様な他者との関わりの創出事業」賢い活用徹底ナビ】、第3回【「多様な他者との関わりの創出事業」で育つこどもの力】と続きますので、公開までしばらくお待ちくださいね。