こども誰でも通園制度 活用ガイドvol.3~【保育士解説】「多様な他者との関わりの創出事業」で育つこどもの力

「こども誰でも通園制度ナビ」スタッフで保育士のマコです。このサイトは、子育て支援を行うここるくが運営しています。
「こども誰でも通園制度」(※以下、「誰でも通園」)に関する情報発信の一環として、東京都が独自に実施している「多様な他者との関わりの機会の創出事業」(※以下:「多様な他者」)についてご紹介する3回シリーズの最終回です。
「園で育つ時間」と「つながり」がこどもやママパパにとって、どんな良い影響をもたらすのか保育士目線で分かりやすくお伝えします。
目次
1.東京都が「多様な他者との関わりの創出事業」を始めた目的は?
東京都がこの事業を始めた背景には、以下の2つの大きな目的があります。
○こどもが他者と関わる中で、さまざまな体験や経験を通じて非認知能力を育むこと
○支援が必要な家庭とつながり、孤立や育児不安を防ぎ、地域で支え合う仕組みをつくること
言いかえると、「こどもの健やかな成長」と「家庭が地域とつながること」の両方を目指した取り組みなんです。
2.非認知能力ってなに?他者との関わりで育つ大切な力とは?
非認知能力とは、数値やテストでは測れないが人生の土台になる力のこと。今回は、保育園生活での具体的なエピソード交えながら3つご紹介します。
・諦めずにやり抜く力(やり抜く力・問題解決能力)
【エピソード】
積み木で高いお城を作ろうとしたAちゃん。何度崩れても、工夫して積み上げ直し、ついに完成させました。
【ポイント】
失敗しても諦めず、どうすればうまくいくかを考え、繰り返し挑戦する力は、将来どんなことにも立ち向かうための大切な土台になります。この経験を通して、「やればできる」という自信や、困難にぶつかっても解決策を探そうとする前向きな姿勢が育まれます。
・自分の気持ちを調整する力(自己調整能力・感情コントロール)
【エピソード】
おままごとのキッチンセットを使いたかったBくん。でもすでに2人のお友だちが使っていました。「つぎかしてね」と自分で言い、別の遊びをしながら順番を待っていました。
【ポイント】
「今すぐ使いたい」という気持ちを抑え、状況を理解して待つことは、感情をコントロールする力につながります。また、自分から「つぎかしてね」と伝え、約束を守って待つことで、ルールを理解し、状況に応じて行動を調整する力が育まれます
・お友だちと協力する力(協調性・コミュニケーション能力)
【エピソード】
砂山作りをしていたこどもたち。「お水を足した方がいいんじゃない?」「バケツを持ってくるね」などそれぞれのアイデアを活かし、協力することで、大きな砂山ができました。
【ポイント】
自分の意見を伝え、相手の意見も聞きながら、共通の目標に向かって協力する力は、人との関わりの中でとても大切です。この経験を通じて、こどもたちは相手の考えを受け入れる柔軟性や、お友だちと一緒に何かを成し遂げる達成感や楽しさを知ります。
私たち大人が普段の生活であえて意識することは少ないかもしれませんが、どれも社会生活で必要な力です。実はこういった能力は、乳幼児期の成長の中でその土台を身につけていくものなんです。

3.ママパパにとっての子育て支援の価値
この制度のもう一つのポイントは、「家庭のための支援」でもあるということです。
・園とつながることで、日々の子育てを「相談できる場所」ができる
例)「最近、離乳食への食べ進めが悪く困っていたので相談してみたら、もう少しステップアップしたものを!とアドバイスをもらい、またたくさん食べてくれるようになりました!」
・園での様子を知ることで、家庭での子育てのヒントが得られる
例)「急にいないいないばぁをやるようになって、ビックリ。前に私も家でやっていましたが、お友だちと一緒にやって楽しかったんですかね。今は一緒にやるとご機嫌です!」
・こどもと離れて過ごす時間ができることで、自分のリフレッシュになる
例)「家の中を片付ける時間が取れなくてひどい状態になりそれ自体がストレスでした。園に行っている時間に集中して片付けることができてストレスからも解放されました!」
制度を利用する前までは、これまでおうちで過ごしていたお昼寝や食事などの生活リズムが変わることへの不安を口にしていたママパパもいらっしゃいます。しかし、お子さんの新しい成長の一面を知る喜びは子育てをさらに笑顔の多いものに変えてくれます。
また日々頑張り過ぎてしまう子育ての手を少しだけ止めて心にゆとりを持てる時間は、お子さんが小さい間にはむしろ必要な時間であることが良く分かるのではないでしょうか。子育てを家庭の中だけで抱えこまず、制度を活用してみてほしいです。
4.こどもたちの世界が広がるきっかけに
家族以外にお子さんを預けたことがない方にとっての初めての保育園生活は、「いっぱい泣いてしまうんじゃないかな?」「ちゃんとミルク飲めたかな?」「お友だちと仲良く遊べるかな?」と次々と不安に襲われてしまうことでしょう。ですが、保育者はその道のプロです!どうか、不安になり過ぎないで下さい。ご自身が想像している以上にこどもたちは自立に向かう力を持っています。
不安が大きい場合は、「親子通園」からスタートして集団生活に慣れていける園などを選ぶのも一つの方法です。
「多様な他者」の利用を通して、家庭だけでは出会えない人との関わり、遊び、体験を楽しみながら、こどもの世界を広げられるように皆さんを応援しています!

5.まとめ:頼れる制度を上手に活用して、笑顔あふれる子育てを!
ここまで、「多様な他者」がこどもに与える良い影響、そしてママパパにとっても大きな価値があることをお伝えしてきました。
東京都独自の制度「多様な他者との関わり機会の創出事業」の活用ガイドシリーズは今回でおしまいです。「多様な他者」は、お子さんにとって新しい世界が広がる素敵なチャンス。家庭では経験できないような「多様な関わり」の中で成長し、きっといきいきとした表情を見せてくれるでしょう。そして、ママパパも少しでも自分の時間ができたり、地域の「頼れる場所」とつながることで、心にゆとりが生まれるはずです。
子育ては一人で抱え込まず、頼れる制度は積極的に活用して、家族みんなが笑顔になれる子育てライフをデザインしていきたいですね!
シリーズ第1回 【「多様な他者との関わりの創出事業」ってなに?賢い活用徹底ナビ】、シリーズ第2回【「多様な他者との関わりの創出事業」賢い活用徹底ナビ】も合わせてご覧くださいね。
これからも「こども誰でも通園制度」を中心に役立つ情報をどんどん配信していきますので、どうぞお楽しみに。
シリーズ第1回 【「多様な他者との関わりの創出事業」ってなに?賢い活用徹底ナビ】、シリーズ第2回【「多様な他者との関わりの創出事業」賢い活用徹底ナビ】も合わせてチェックしてみてくださいね。