連載2「教えて、園長先生!」:子どもを預けることの罪悪感「社会福祉法人 仁慈保幼園」

妹尾正教 「社会福祉法人 仁慈保幼園」

親の接し方や言葉のかけ方ひとつで、子どもの反応は変わる。
だからこそ、普段の子育てで「これでいいのかな?」って迷うこと、ありませんか?

そんな身近なお悩みをテーマに、保育の経験豊富な園長先生たちからヒントをもらうコラム「教えて、園長先生!」の第2弾です。

今回は、歴史ある保育園を引継ぐなかで常に時代に合った保育を追求する「社会福祉法人仁慈保幼園」理事長兼統括園長の妹尾正教先生にお話を伺いました。(聞き手:ここるく代表 山下真実、2児の母。)

現代だからこその「預ける罪悪感」

山下真実 対談 子育て支援
託児付きランチサービス「ここるく」には、託児するのが初めてというママがたくさんいらっしゃいます。
自分から、またはお友達に誘われて、託児付きランチを楽しみに来てくれているママたちですが、それでもやっぱり預けることに罪悪感のようなものを感じている人はまだまだ多いのかなと。
妹尾正教 対談 子育て支援
僕たちが育った頃は、もっと他人の家族との距離が近かったのですが、現代の子育て環境では、この距離感が変化してきていますね。
昔のように近所の人に預ける機会も現代ではなかなかないですよね。
山下真実 対談 子育て支援
1960-80年代は、歴史的に見ても「専業主婦全盛時代」だったそうですが、他人との距離感が遠くなったにも関わらず、「ママが子育てに専念する」という図式が今もそのまま残っているせいで、日本のママたちは無意識レベルでこの「罪悪感」を持ってしまうという感覚なのかなと私は感じています。
妹尾正教 対談 子育て支援
子どもの視点に立つと、生まれた時から色んな人と関わって生きていくことはとても大切です。
市民の一人として地域社会や文化に触れること、色んな大人、色んな子どもと関わり合うことで、多様な価値観に触れていくことができるからです。
色々な人の価値観のなかで、子どもは「自分」を形作っていくものなんですよね。
山下真実 対談 子育て支援
いつも同じ人ばかりでは、多様な価値観に触れられるチャンスが減ってしまうということですね。
保育園の場合、「子どもを預けて働くこと」に葛藤されるママを身近で見ておられると思いますが。
妹尾正教 対談 子育て支援
もちろん子育て環境の最小単位として、「親子の時間」「親子の関係性」は最優先されるものです。
でも、そこだけを強調されてしまう今の世の中での子育てって、とても苦しいですよね。
罪悪感や葛藤を抱えてしまうのも当然だと思います。
だからこそ保育園や幼稚園は、多様な価値観に触れる窓口であり、子どもが生まれながらにして社会の一員であることを伝える場でありたいんですね。
保育園の先生たち、クラスのお友達、保育園のある地域の方々やコミュニティの関わりを通して、子ども達にはもっと大きな世界を覗いて欲しいですし、子ども達の可能性を広げてあげたいです。
山下真実 対談 子育て支援
「預ける」という入口から、多様な価値観との出会いを生み、それが子どものアイデンティティーのどこか一部を形作っていくのだとしたら・・・!保育園に預けることに親としてもワクワク感が生まれますね。

安心して預けられる環境であることが大前提ではありますが、預けることで子どもの中のまだ見ぬ扉が開くのかも知れないと思うと、預けることに対する見方が変わるのではないでしょうか。
特に、これから保育園に預けて復職しようと準備しているママには、「預けることの意味」を納得した上で前に進んで行きたいですよね。

今回お話しを聞かせて下さった妹尾先生が居られる「世田谷仁慈保幼園」は、園での多様な価値観との出会いを親も一緒に共有していける仕組みが取り入れられています。
実際に現地で取材してきた様子を、日経DUALの連載コラム「未来へ続く保育」からお読みいただけますので、ぜひ合わせてご覧ください!

社会福祉法人たちばな福祉会
RISSHO KID’Sきらり(神奈川県相模原市)園長 坂本喜一郎先生10年間に亘り小学校教諭、幼稚園教諭として幼児・初等教育に関する幅広い知識と経験を積んだ後、保育の世界へ。大人も子どもも「夢を叶える」をコンセプトに、保育にイノベーションを巻き起こす存在。